電気ブラン

f0013998_1305260.jpg「東京の下層社会」を読みながら、「電気ブラン」に出会うことになった。
この本には、明治から大正、昭和の初期にかけての下層社会の実態について驚くようなことが書かれてあり、あまり知られていない社会の底辺で暮らす人々のショッキングな内容が出てくる。

その中に、「清酒20銭、正宗30銭が高級品として扱われる時代、労働者の嗜好する安い酒(大コップ1杯10銭)として、泡盛、濁酒、ぶどう酒、ブランデー、ウイスキーなどがあった」というくだりがあり、このブランデーは現在のそれとは違い「電気ブラン」であった、と紹介される形で登場する。刺激強く、一杯飲めば胃の腑が出火したように胸が熱くなる代物、とも書かれてある。

浅草の酒店主、神谷伝兵衛がコレラに効く、という宣伝のもと製造販売した速成ブランデー(ブランデー、ジン、ワイン、キュラソー、薬草が配合)。電気ブランの「電気」は、当時の先端的イメージから、電気のようにしびれる、という意味でつけられたということ。 

なんと、人間失格の中にも、「酔いの早く発するのは電気ブランの右に出るものはない」という記述があり、昭和の初期には既に無産労働者階級の定番商品にもなっているのであった。
杉本が箱根で区間賞をとった5年前、近藤と新橋の屋台のような店で飲んだ時、初めてその存在を知った電気ブランにこのような歴史があったとは驚きである。

旨いよりも強い酒を求める労働者に求められて出来上がった電気ブラン。
関西にいてはあまり聞くことのないこの酒の歴史を、秘密の飲み物として一度きちんと紹介されてもいいのではないかと思う。
by saitoru1960 | 2011-01-07 05:32 | いろいろ

心動かされたことを忘れぬように


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