「どくいり きけん たべたら しぬで」

f0013998_21061771.jpg 2020年の東京オリンピックが3年後に迫ってきている。
 1964年の前回から56年ぶりの開催。それが昭和の39年と知ると、平成生まれの高校生には遥か昔の出来事に感じられることだろう。高度経済成長、右肩上がり、新・三種の神器(カラーテレビ、クーラー、自動車)。次第に高さを増していく東京タワーを映画などで観ていると、汗と埃にまみれながらも、希望あふれる明日を楽しみに生きている人々の高揚感までもが伝わってくる。

 「キツネ目の男」が世の中に突如現れるのは、東京五輪からちょうど20年後の昭和59年。
 2020年のオリンピックが近づくにつれ、マスコミはこぞって昭和と平成の時代を比較しながら、前回と今回のオリンピックを取り上げるに違いない。その時、数ある昭和の大事件の中ではずすことのできないのが、未解決のまま時効になった「グリコ・森永事件」である。
 入浴中のグリコ社長を誘拐し、身代金10億円と金塊100kgを要求するところから始まったこの事件は、グリコ、丸大食品、森永製菓、ハウス食品、不二家などの脅迫、はたまた、グリコや森永などのお菓子に青酸ソーダを入れ「どくいり きけん たべたら しぬで かい人21面相」と書いた紙を貼って店頭にならべるなど、まるで推理小説の様相を呈していった。店の陳列棚からはグリコ製品や森永のお菓子が撤去され、ワイドショーは連日話題に事欠くことはなかった。また、企業への脅迫状とは別に、新聞社や週刊誌に挑戦状を送りつけ、「けいさつの あほども え」など、警察やマスコミを挑発し、あざ笑うかのような内容が多かったため、世間は恐怖を感じながらも権力への反発心から、犯人の一人と目されたキツネ目の男を興味深く見ている所もあった。
 この事件が特異なのは、事件が続いた約1年半の間、被害者(殺される)が一人も出ず、身代金など金銭の受け渡しが一度も成功しなかった(表立っては)ことである。2000年2月、事件は時効をむかえている。

 さて、この「罪の声」。
 ある日、亡き父の遺品を整理しているとノートとカセットテープが見つかる。ノートには英文に混じって「グリコ」と「森永」の文字。テープを再生すると幼い頃の自分の声が流れてくる。そして、少し途切れた後、その同じ声はグリコ森永事件の誘拐脅迫文を読み上げるのだった。
 もし、あなたがこのテープを聞いた本人であれば、その後の自分の人生がどう展開していくか想像できるだろうか。


by saitoru1960 | 2017-05-16 21:02 |

心動かされたことを忘れぬように


by saitoru1960
プロフィールを見る