バラーバルな日々:物語
2023-04-04T23:44:44+09:00
saitoru1960
心動かされたことを忘れぬよう
Excite Blog
朗読・深夜特急
http://saitoru.exblog.jp/32982206/
2023-04-04T23:44:00+09:00
2023-04-04T23:44:44+09:00
2023-04-04T23:44:44+09:00
saitoru1960
物語
インドのデリーから、イギリスのロンドンまで、乗り合いバスを乗り継いで行くことができるか。友人たちと賭けをしたひとりの若者が、わずかな金を手に、日本を出発した。いざ、ロンドンへ、2万キロの彼方に。」
沢木耕太郎による旅文学の傑作「深夜特急」を俳優・斎藤工が朗読する。1~6巻すべてを、およそ半年間で読む音の旅。
]]>
北の国からスペシャル・第7位「83冬」
http://saitoru.exblog.jp/32929896/
2023-01-23T14:53:00+09:00
2023-01-23T14:53:50+09:00
2023-01-23T14:53:50+09:00
saitoru1960
物語
賑やかな年の瀬を迎える中で入ったのは「正吉が家出した」という一報だった。
夜、正吉を発見した純たちは彼を丸太小屋に連れ帰る。
翌朝、黒板家を訪ねてきた正吉の母・みどりは「しばらく正吉を預かってほしい」と頼むのだった。
しばらく後、もう一人の来客があった。五郎の父や杵次たちとともに麓郷開拓の祖とも言われる沢田松吉だった。
東京で成功し隠居したという松吉の帰郷に宴席が設けられるなど、町は活気づく。
そんな中、五郎を訪ねてきたのは、借金取りの男たちだった。
五郎はみどりが作った借金700万円の連帯保証人になっていたのだ。金を払うか土地を手放すか、五郎は追い込まれていく。
そうとも知らず「家出中の自分に螢が年賀状をくれた」と浮かれる正吉。
しかしひょんなことから借金問題が純たちの耳に入り、五郎と純、正吉の関係に軋みが生じる。
そして正吉はまたも黒板家を飛び出してしまった。
その夜、再びみどりが姿を現した。
みどりは「もうどうにもならん」と呻めき、汽車で富良野を出ていくという。
そんなみどりに、五郎は松吉や自分の半生を引き合いに出し故郷の良さを説く。
そして「正吉を預からせてくれ」と申し出るのだった。
朝、丸太小屋の雪おろしが進んでいた。正吉だと三人は直感するが、その姿は見えない。
正吉は屋根から落下し、雪の中に埋まっていた。
一命を取り留めた正吉が眠る病院。
仲間たちが五郎を訪ねてきた。
皆が少しずつ金を工面したという。ただただ頭を下げる五郎。
そんな話に松吉は援助を申し出るが、松吉の孫娘、妙子は涙ながらに言う。
「都合のいいことばかり思い出さないでよ」。
郷里を出奔した松吉の記憶はもはや曖昧で、財力など持ち合わせていなかったのだ。
しかし五郎は松吉の言葉に真摯に向き合い、礼を述べるのだった。
夕刻、松吉は、雪の中で豆を蒔いていた。
その目に映るのは、かつての開拓の同志たち。松吉の心は、自身が豆大臣と言われたあの頃へ、村が豆で豊かになったあの頃へと旅していた。
そして1月10日、再び五郎は出稼ぎのため、東京へ向かう。
純、螢、正吉の三人の暮らしが始まろうとしていた。
]]>
北の国からスペシャル・第7位「84夏」
http://saitoru.exblog.jp/32929883/
2023-01-23T14:37:00+09:00
2023-01-23T14:37:51+09:00
2023-01-23T14:37:51+09:00
saitoru1960
物語
さらに五郎のことを悪く言われた純と正吉は、努のパソコン雑誌を盗んでしまう。
どちらが先に盗ろうとしたか言い合う中で、正吉は「やっぱりお前は汚い奴だ」と言い放つ。
純は、まだまだ雪が残る春のことを思い出していた。
その日、純と正吉は濡れた衣類をストーブの上に掛けるが、それがきっかけで丸太小屋が全焼してしまったのだ。
純が言い訳を重ねる中、正吉は自分のせいだと警察に言い……。
そうした夏休みのある日、純と五郎は、五郎が風力発電を諦めていることについて、言い合いをしてしまう。
つい、純に強く言い返す五郎。
草太を捨てるように東京に帰る雪子にも納得できないでいた彼は、感情を持て余し、こごみの店へと向かう。
翌日、純と正吉は努と川で遊ぶもけんかを始めてしまい、雨の中、置き去りにされた勉は軽い肺炎を起こす。
その責任について衝突する正吉と純。
正吉は再び純に「相変わらずお前は汚い野郎だ」と言うのだった。
その頃、五郎たちは東京へ戻る雪子を駅で見送っていた。
目ざとく駅の外にいる草太を見つける螢。二人は駅から離れ、川べりから雪子を見送る。
雨に打たれる努を見つけたのは、その帰り道の草太と螢だった。
夜、純は五郎に詰問される。
しかしそこでも純は五郎の言葉を受け止めきれず、全てを正吉のせいにしてしまう。
そして翌日、ついに正吉が去る。みどりが迎えに来たのだ。
すれ違いのまま最後の時が来る。
それでも二人は、背中越しにぎこちなく仲直りを果たす。
その帰り、黒板家の三人はラーメン屋へ。
食事に箸を付けない純、何かを察する父と妹。
駅で親友とエールの交換をしていた純は、春から夏のいろいろな出来事について、五郎に「僕が卑怯で弱虫だった」と吐き出すのだった。
涙ながらに語る息子に「自分もいつの間にか人に頼ろうとしていた。だらけてた」と本音をこぼす父。
家族の語らいを遮ろうとするラーメン店の店員に、思わず「子供が、まだ食ってる途中でしょうが」と言葉を荒らげる五郎だった。
三人は手を繋ぎ、肩を組み、町を後にする。
富良野名物の筏下りが終わり、早い秋がすぐそこまで来ていた。純の薪を割る音が、森に響いていた。
]]>
北の国からスペシャル・第6位「89帰郷」
http://saitoru.exblog.jp/32929881/
2023-01-23T14:34:00+09:00
2023-01-23T14:34:37+09:00
2023-01-23T14:34:37+09:00
saitoru1960
物語
始発で旭川の定時制看護学校に通い、日中は病院で甲斐甲斐しく働く螢。悩み多き日々の中で、螢に初恋が訪れた。
相手は同じく始発に乗っている浪人生の勇次だった。
ささやかなデートの日々。しかし互いの進学・就職によって、別れが来ることは分かっていた。
二人は勇次の故郷を訪れ、悲しい現実に抗うかのように、キスをする。
勇次は木に二人のイニシャルを刻む。こらえきれず涙を流す螢。
さまざまな現実と向き合いつつ戴帽式を迎えた螢は、純に手紙を送るのだった。
純は、東京に飲み込まれるような暮らしをしていた。
髪を赤く染め、夜はバイクを乗り回す。
同世代の友人たちに追いつこうともがいていたのだ。
昼間の仕事も長続きせず、今は工場で働いていた。
ある日、純は職場の友人・アカマンから、工場の先輩・水谷への借金、沖縄の家族の病気のことを打ち明けられる。
家族を思う言葉が純の胸を刺す。
富良野を出る時のあの泥のついた一万円札二枚は、純のお守りになっていた。
そんな純は、友人・エリの兄のつてで400ccのバイクを手に入れる。
ところがそのバイクが盗難車だったことから警察の聴取を受ける。
同じく事情聴取された水谷は、純への怒りを隠さない。
気まずい工場の更衣室。純は、お守りの一万円札がなくなっていることに気付き激しく動揺する。
アカマンが「少し借りて水谷に渡した」と告白するが、皆のロッカーを漁った純を水谷は純を殴打する。
一方的に殴られた純は、バールのようなものを手に、水谷を殴り倒すのだった。
警察から戻った純を、雪子の夫・利彦が責める。
「理由は聞いてくれないの?」と繰り返す純は家を飛び出し、己の拳を激しく電柱に打ち付けるのだった。
翌日、純は工場をクビになった。
訪ねてきたのはエリだった。
事情を聞き、水谷から一万円札を取り返して来たのだ。
使われたもう一枚を探すため、店から店へと歩き回るエリの姿に、純は心を打たれる。
暗い部屋に戻り、故郷を思う純。
その富良野では、五郎に純の傷害事件の報が入っていた。
五郎は動揺を抑え、いつものように螢を駅で迎え帰宅するが、誰もいないはずの小屋に向かい、足跡が。
玄関に入った五郎の目に飛び込んでくる脱ぎ捨てられたジャンパー。
階段を駆け上る五郎。そこには、拳を怪我した純が丸まって眠っていた。
目覚めた時、階下には歴代の番長たちが揃っていた。
純はたちまち捕まり頭を黒く染められる。
嵐のように去っていく番長連を見送り、黒い髪をうれしそうに触る純。
そして五郎が再び丸太小屋作りに挑戦していることを知り、作業現場へと向かう。
何度も頭を下げる純を、五郎は笑顔で迎え入れるのだった。
不意に五郎が「螢が恋をしているらしい」とうれしそうに言う。
その後「あいつも来年、ウチを出て行く」とも。しかし、それでも優しい父の表情。
二人は夜の列車に螢の恋人を見に行くが、螢は一人だった。
勇次との別れが決まったのだ。
気丈に振る舞う螢だが、父からの温泉の誘いに「行けない。あの人が行っちゃうの」と答えるのが精いっぱいだった。
その夜、純は螢に父の丸太小屋に全員の部屋があることを言う。
そこでも螢は「その話されると私泣いちゃうから」と押し殺すように答えるのだった。
勇次の出発の日。螢がプレゼントをそっとベンチに置く。
浪人生の勇次は家族の手前、一人でベンチに駆け寄り、包みを拾う。
そして代わりに手紙を残す。
こうして勇次は去っていった。
彼からの手紙には、故郷でのデートを思い返すように見たという夢の話が書かれていた。
帰宅した螢は二階に駆け上がり、声を殺して泣くのだった。
その夜、純は五郎の風呂に薪をくべながら、事件のことを告白していた。
理由を問われ「大事なものをそいつに取られたから」と答える。
「それは人を怪我さすほど、大事な物だったのか。なら、仕方がないじゃないか。男は誰だって、何と言われても闘わなきゃいかんときがある」。
それが父の答えだった。
そして富良野に戻りたいとこぼす純に、五郎は巣立ちを促すかのように優しくエールを送る。
螢が飛び出してきたのは、その時だった。螢が持つラジオから流れてきたのは、札幌にいるれいからのリクエスト曲、二人の思い出の曲だった。
純は急ぎ、札幌に向かう。
ついに二人は再会し、かつてれいが語った天窓のある喫茶店へと行くのだった。
会話の中で、幼い頃を思い出す。
だらしないと思っていた父の強さを、父が一人で背負ってきたものを、思い返す。
ふと、れいの手が純の傷に触れる。やがて二人はだまって駅へと向かう。それが、正月の出来事だった。
――思い出を酒場で語る五郎は、ひどく酔っていた。
隣り合わせた観光客に絡んでいく。
東京にいる純のこと、死に別れた令子、旭川へ移っていった螢のこと。
その言葉に自慢と寂しさが交錯する。
そんな五郎の姿に中畑は涙を堪えきれず、五郎を担ぐようにして店を出る。
二人は、雪に煙る路地を、もつれるように歩いて行った。
]]>
北の国からスペシャル・第5位「92巣立ち」
http://saitoru.exblog.jp/32929877/
2023-01-23T14:29:00+09:00
2023-01-23T14:29:08+09:00
2023-01-23T14:29:08+09:00
saitoru1960
物語
翌年旭川の看護学校を卒業する蛍を財津の医院に就職させてもらいたいからだ。
雪子が息子の大介を連れて富良野にやってくる。
五郎は前の家が雪でつぶれて中畑木材の資材置き場の小屋で愛犬のアキナと暮らしている。
前から続けている丸太小屋作りはすべて自力でやるために大工の金治に弟子入りしていた。
山の上に畑から出た石を運び、家の基礎と大きな風呂が完成していた。
蛍は休みになると帯広の大学にいる勇次の所に通っていた。
帯広に行くには富良野で列車を乗り換えるが、蛍は柱の陰に身を潜めて人に見られないようにしていた。
後ろめたかったが、帯広に着き、勇次やその仲間に会うと忘れ去ってしまう。
勇次は蛍に卒業後は札幌の病院に勤めながら正看護師の資格を取るよう勧めているが、五郎のことを思うと決心できないでいる。
旭川に戻る途中、列車内で自衛官となった正吉に再会する。懐かしむ2人であったが、蛍は正吉にここで会ったことを内緒にしてくれと頼む。
へそ祭りの日、蛍は富良野に戻るが、札幌の病院に勤める勇次の伯父に会うのが目的だった。
人ごみの中、勇次と手ぶりで合図を送る蛍の肩を正吉が叩く。
雪子を見送った蛍は旭川に帰ると嘘をついてプリンスホテルに向かう。
正吉は蛍と前に会ったことを隠して五郎の家に向かう。
正吉は茶封筒に入れた現金を差し出し、自分も息子だと五郎に言う。
感謝して受け取る五郎はもう一人の息子を思う。
純は東京でなんとなく生きていた。
毎週土曜日札幌にいるれいと同じ映画のビデオを見て電話で感想を言い合う遠距離デートが楽しみではあったが、マンネリも感じていた。
純はピザの配達員をしているタマコと知り合い、距離を縮める。
タマコはビデオ見放題のラブホテルで一緒に映画を見ようと提案する。
渋谷のラブホテルに来た純とタマコ、タマコは映画鑑賞会に浸るが、きっかけが分からないまま純は強引にキスをする。
我に返ったタマコが悲鳴を上げて純を押しのけるが、気まずい空気に耐えられなくなったタマコが純に抱き着き、二人はそこで初体験をする。
それから二人は映画観賞会と称した逢瀬にはまってしまう。
秋になり、富良野では草太とアイコの結婚式が草原の中で行われようとしていた。嫁不足に悩む青年会が主催し、テレビの取材も呼んだイベントであったが、妊娠していたアイコはトラクターに乗せられ流産してしまう。
同じ頃、純はタマコから妊娠したかもしれないと告げられる。
不安な日々を過ごす純はタマコを避ける。
タマコは一人で堕胎手術を受ける。
純はタマコの叔父に殴られ、父親の連絡先を聞かれる。数日後大きなカバンを抱えた五郎がやってくる。
土下座を続ける五郎に叔父は蛍がそこらの不良にはらまされたと想像してみろと言い放つ。
落ち込む五郎はふと流れてきた長渕剛の「西新宿の親父の唄」という曲に勇気づけられる。
富良野に戻った五郎はタマコの叔父の「誠意とは何か?」と問う言葉を反芻する。
そして丸太小屋用の材木を売って金を工面する。
建築現場の山に戻った五郎は石だけで家を作ることを思いつく。
呆れる中畑だったが、五郎は「西新宿の親父の唄」を歌って井戸も自力で掘ると言う。「やるなら今しかねえ。」
11月の終わり、タマコが純の前に現れる。タマコは五郎から送られた100万円の現金書留を純に渡すと東京はもう卒業すると言い残して鹿児島に帰っていく。
五郎が井戸を掘っているところにこごみが訪ねてくる。
大晦日に石で作った風呂に子供たちと一緒に入ることを楽しみにしていると語る五郎にこごみは思わず涙ぐむ。
大晦日五郎は風呂の準備をしてから、純と蛍を迎えに行く。
蛍を待つ間、純は100万円の現金書留を五郎に返す。
タマコの言葉を借りて自分はもう大人だから自分のしたことの責任は自分で背負うと言う純に五郎は余計なことをしたと言いながらも出した以上は見栄があると強引にお金を純に押し付ける。
蛍は勇次と一緒に駅から出てくる。
そして正看護師の資格を取るために札幌の病院に就職を決めたと言い放つ。
五郎は純と家に戻ると悄然と座りこんでしまう。
暗くなっても戻らない蛍を純は五郎の車で迎えに行く。
五郎は石の家に向かい、凍ってしまった風呂を炊き、屋根の雪下ろしをしながら蛍のことを思う。
ふと足を滑らせた五郎は落下して丸太の下敷きになる。
吹雪はどんどん激しくなる。
五郎は雪に埋もれたシートを針金で引き寄せて屋根にするとたばこの包みや手ぬぐいに火をつけて暖をとろうとする。
純は中畑や金治の家を訪ね回る。
そのすきにアキナがどこかに駆け出して行く。五郎の意識が薄れゆく中、玲子が現れる。
五郎に対し玲子は子供たちは巣立ったばかりだから巣を守れと言う。
玲子の姿が消えるとアキナが駆けてくる。
午前3時を過ぎ、金治が純と蛍を連れて石の家の山に向かう。
吹雪は止み、雪に埋もれたシートをめくると五郎が倒れている。
パニックになって叫ぶ蛍に金治は平手打ちをし、お前は看護婦の卵だろうと気合を入れる。
純は中畑に助けを求めに走る。
2日後、金治は石の家に行っていた。
落ちている針金や燃やそうとして柄を削ったスコップなどを指さし、これは運じゃない、あいつは自分で生きたんだと純と蛍に言って聞かせる。
富良野に残ると言う蛍にそんなことをしても父さんは傷つくだけだと純は蛍を札幌に送り出す。
そして純が富良野に戻ると言う。「東京はもう卒業したんだ。」
]]>
北の国からスペシャル・第4位「95秘密」
http://saitoru.exblog.jp/32929873/
2023-01-23T14:24:00+09:00
2023-02-09T19:38:37+09:00
2023-01-23T14:24:18+09:00
saitoru1960
物語
純は自衛隊を退官した正吉と町中のアパートで同居し、3年前の事故で足を傷めた五郎にも一緒に暮らすよう言っているが、五郎は自分で作り上げた石の家に風車で井戸水をくみ上げる装置を作ることや有機農業に夢中である。
純は粗大ごみの集積場を山部山麓デパートと名付け、家具や家電を修理しては自宅で使ったり、知り合いにあげたりするのを趣味にしていた。
そこに間違って粗大ごみに出された柱時計を探すシュウが来る。
その時計は純が修理して五郎の家にかけていた。
時計をシュウに返して北時計(カフェ)で二人は昔話をする。
シュウもまた東京にいたが、語りたくない過去を持っている。
純は札幌にいるれいと遠距離恋愛を続けていたが、れいは他の男から結婚を申し込まれている。
純は石の家にシュウを連れて行き、五郎を紹介する。
五郎の生きざまにすっかり惚れ込んだシュウは時々一人で石の家に行くようになる。
ある日札幌で勇次に会った純は、蛍が勤務先の医師・黒木と不倫に陥り、駆け落ちしたと聞かされる。
純はシュウと楽しそうに作業をする五郎を見て蛍のことを話すことができない。
そんなある日幼馴染の広介がシュウのことで意味深な言葉をかける。
純は正吉に問い正すが、その時2人の前に蛍が現れる。
純は黒木の息子に連絡しようとするが、落ち着き先が決まったら必ず連絡させるという蛍に金を渡し、根室に向かう駅まで送って行く。
純はその後ろ姿に強い女になった妹を見ていた。
正月休み純は広介にシュウがAV女優だったことを知らされる。
荒れる純に草太は優しく諭すが、吹っ切れない純はシュウに辛く当たってしまう。
一方五郎の家に蛍の上司である婦長が訪ねてくる。
歓待する五郎だったが、彼女の夫が蛍と不倫の末、駆け落ちしたことを聞かされ愕然とする。
五郎は一緒に蛍に会いに行ってくれと純に頼む。
根室の落石に着いた五郎は蛍にかける言葉が見つけられずに酒を飲むしかできない。責めることなく、優しく言葉をかける五郎に蛍は自分で自分を責めていると激しく泣く。
ある日シュウは五郎を山奥の野天風呂に誘い、純が自分の過去の秘密を知ったらしいこと、それがひっかかって二人の関係がダメになりそうだと話す。
結婚式を翌日に控えたれいから電話を受けた純はいつか二人で見た映画のように花嫁をさらいに行くと言う。
翌朝車に置かれたシュウのメモをポケットにしまうと純は札幌に向かう。
れいの幸せな姿を見届けた純は蛍に思いをはせる。
部屋に戻ると五郎が来ており、シュウが待つ北時計に行くように勧める。
ごみの車に乗るようになってよく手を洗うようになった純に五郎は人を長くやっていると誰でも汚れの一つは付くものだと諭すと、北時計に連れて行く。
シュウは手紙を書いていた。
シュウは東京でどうしてもCDデッキが欲しくてAVの誘いに乗せられた経緯を読み上げようとする。
純はその手紙を破り捨てると山部山麓デパートにCDデッキを取りに行こうと誘う。
]]>
北の国からスペシャル・第3位「98時代」
http://saitoru.exblog.jp/32929866/
2023-01-23T14:19:00+09:00
2023-02-09T19:38:37+09:00
2023-01-23T14:19:41+09:00
saitoru1960
物語
純は鏡台を完次の新婚宅に届ける。完次はチンタの兄で嫁のツヤ子はチンタの元彼女だった。
完次は草太に勧められて農地を広げる一方、五郎の助けを借りて有機農業に取り組んでいる。
清吉の死後、牧場を継いだ草太は近代的な牧場経営と大規模農業に傾倒しており、完次と五郎を否定していた。
純は上砂川のシュウの実家にあいさつに行く。そこには無口なシュウの継父とシュウの兄姉らが揃っており、純はすっかり委縮してしまう。シュウは兄によって上砂川に連れ戻される。
シュウは2人の関係を認めてもらうための試練だと受け入れるが、純には不安しかなかった。
雪子が井関と離婚して富良野に戻ってくる。
雪子のアパートに家具を運んだ純は代わりに大介に電話をかけてほしいと頼まれる。
息子の大介は父親の元に残っていた。
ヘソ祭りの朝、中畑が純を呼び止め蛍が金を借りに来たことを告げる。
夕方になり、純が正吉に呼び出されて喫茶店に行くと蛍がいた。
純は厳しい口調で問い詰めるが、蛍は事情を話さない。
そして2人の隙をついて行方をくらましてしまう。
深夜、牛の出産作業をする草太の所に蛍が現れる。草太は理由も聞かずに蛍に金を貸し、札幌まで送っていくと言う。
蛍は黒木の子を妊娠しており、札幌で一人で生み育てるつもりであることを話す。
8月になって異常気象による豪雨が続き、完次の農地に疫病が見つかる。
五郎の助けを借りて苗を処分するが、五郎は草太には内緒にするように言う。
草太は正吉を呼び出し、蛍と結婚しろと命じる。
蛍が一人で子供を産もうとしている、黒板家はお前の家族だと説得する。
正吉は札幌に蛍を訪ねプロポーズするが、蛍はそれを受けられない。
正吉は母親のみどりから加藤登紀子の歌「百万本のバラ」を聞かされ、どこにでも咲くオオハンゴウソウを百万本摘んで蛍に贈る。
純や完次はその姿をいぶかしむ。
盆休みの後、純は正吉から蛍を妊娠させてしまったこと、結婚したいことを打ち明けられる。
動揺して怒鳴りつける純だったが、正吉は車で待つ蛍の所に純を引きずって行く。
二人の意思に圧倒された純は二人を富良野プリンスホテルに泊める。
翌朝みどりが純の部屋に現れるといきなり正吉を殴り始め、純には土下座して詫びる。
3人は五郎の家に行き、正吉が蛍をくださいと五郎に言う。
五郎は泣き笑い顔で3人の手を握りしめると令子の遺影の前で声を上げて泣く。
そしてみどりに雪子と中畑を呼んで宴会を始め、騒いでいるところにツヤ子が駆け込んでくる。
完次の奥の畑に疫病が出て、隣接する草太に伝えたところいきなり大型トラクターで乗り込んで来て農薬をまき始めたのだった。5年かけて生き返った土がまた死んだと完次は泣き崩れる。
秋になり、蛍は結婚式まで五郎の家で暮らすことにする。
その頃、麓郷では蛍の子が正吉の子ではないという噂が流れていた。
もやもやした五郎は上砂川にシュウを訪ねる。
そして純は自分の気持ちに素直になれないから、シュウのほうから純に会いに来てやってほしいと頼む。
収穫を終えた頃、完次は借金で行き詰まる。
草太は農業をやめて出ていけと言い放つ。
純と正吉が駆け付け、深夜になっても戻らない完次を探し回る。
完次は廃屋で農薬を飲もうとしているところをチンタに保護されていた。
純は草太のことが許せない思いを五郎に訴えるが、五郎は草太をかばう。
その一方で完次が自分の畑にミミズが戻ったと感謝されたことが嬉しかったと語る。
シュウが純に会いに来る。
シュウは純への気持ちを書き綴った革のノートを贈る。
純が蛍の噂のことを話すとシュウは正吉ならあり得ると言う。
草太は純を呼び出し、臨時職員を辞めて牧場を手伝えと迫る。
手始めに借金のカタに取った完次のトラクターを運ぶのを手伝えと言う草太に純は完次からすべて取り上げたと激しく反発する。
翌日純が雪子の店を訪れている時、草太が事故で死んだという電話がかかってくる。
草太は一人でトラクターを運ぶ途中、誤ってその下敷きになっていた。
手伝いを断ったせいだと自分を責める純をなだめる言葉がない五郎はシュウにそばにいてやってほしいと電話をかける。
草太の遺体が荼毘に付される煙を見ながら純は蛍の正吉への気持ちを確かめる。
四十九日の後、純と正吉は新吉とシンジュクに呼び止められ、牧場を継がないかと勧められる。
一方、時夫と広介に呼び出された純は草太が準備していた正吉と蛍の盛大な結婚式の計画を聞かされる。
蛍も正吉も嫌がるが、麓郷の人たちは盛り上がる。
正吉は牧場を継ぐ方向に気持ちが傾く。
純は蛍の噂を気にかけるが、正吉は蛍のことは任せておけと言い切る。
結婚式の朝、花嫁衣装に身を包んだ蛍はかしこまって五郎、純、雪子に挨拶をして石の家を後にする。
中畑が五郎を迎えに来ると花火が上がり、キャデラックのリムジンが停まっているのを目にした五郎は怒りだし、結婚式には出ないと炭焼きを始めてしまう。
中畑と純が何とか式場に五郎を連れて行くも五郎はひたすら酒をあおるばかり。
やがて愛子がスピーチに立つとカセットテープに残されていた草太のスピーチ練習の声が再生される。
純と蛍が布部駅に降り立った日からの様々な思い出を語る草太の声に参列者は皆これまで通り過ぎてきた時代に思いをはせる。
すっかり酔いつぶれた五郎を抱えて石の家にたどり着いた時、五郎の懐に固いものが入れられていることに純が気付く。
それは令子の遺影であった。
]]>
北の国からスペシャル・第2位「2002遺言」
http://saitoru.exblog.jp/32929857/
2023-01-23T14:09:00+09:00
2023-01-23T14:14:05+09:00
2023-01-23T14:09:10+09:00
saitoru1960
物語
草太の牧場を継いだ純と正吉だったが、2年前に破綻し、借金を分担して別々に富良野を出て行っていた。
五郎は快を保育園に迎えに行き、石の家に連れて行って遊ぶのを楽しみしていたが、勝手に連れて行くなと蛍は怒る。
雪子の元に大介がやってくる。
雪子の家は五郎が廃棄物を資材にして建てたものだった。しかし大介は関心を示さず、雪子や五郎と話もしないで携帯電話のチャットを続けるばかり。
中畑の娘すみえが婚約者を連れて帰ってくる。婚約者の清水は北大卒のエリートだが、五郎が廃棄物で家を建てていることに感銘し、すみえとの新居を五郎に建ててほしいと言い出す。
五郎が清水の提案した糞で発電する装置の設計をしているとシュウが現れる。純が一番苦しい時にそばにいてやれなかったことを悔いるシュウだったが、神戸に嫁ぐことが決まり、純への別れの手紙を五郎に託して帰っていく。それを見送った五郎は腹痛で倒れこんでしまう。
純は羅臼で廃棄物処理の仕事に就いている。
同僚の寅ちゃんと漁師のタクちゃんに親切にされ、浜の番屋にただで住まわせてもらっている。タクちゃんが時々家に呼んでくれることが却って純に孤独を感じさせ、家族が欲しいと思うようになっていた。
鮭の遡上を見に行った純はそこで麓郷の分校で習った涼子先生に再会する。
次の日曜日、涼子先生を訪ねるともう一人の教え子が招かれている。それは数日前漁港で顔を合わせたことのある結だった。その日をきっかけに純は結と付き合い始めるが、寅ちゃんとタクちゃんに結は人妻であり、夫の父の高村がトド撃ちの名人で気性の荒い人なので付き合いをやめるように言われる。
五郎は病院の検査予約をすっぽかす。
蛍に検査を受けるまで快に会わせないと言われ、五郎はしぶしぶ病院に行くが、検査を重ねるにつれて自分が不治の病なのではないかと不安に襲われるようになる。
病院には純の借金を肩代わりした三沢の爺さんが入院している。その家族から蛍は純が借金を返済していないことを責められ、ひたすら詫びるしかない。
疲れ切って家に戻ると快がいない。パニックになった蛍は110番に電話するが、快は空の浴槽に隠れて眠ってしまっていた。五郎が教えたせいだと蛍は責め、純が借金を返済していないことで怒りを五郎にぶつけてしまう。
五郎から手紙をもらった純だが、毎月の返済額と同じぐらい携帯の通信代にかけている自分を情けなく思う。
純は結と会うのを避けていたが、早朝に結が番屋を訪ね、身の上を話して聞かせる。
両親を亡くした結の父親代わりの高村は結にふさわしい男ができたら籍を抜くと言っており、純に結婚するつもりで付き合ってくれているかと聞く。
翌日海岸に湧き出した野天温泉に呼び出された純は高村に身辺を問いただされる。
中畑の妻のみずえが検査のため入院し、蛍に夢で見た五郎の廃棄物で作った家が並ぶ「拾ってきた町」の話をする。
すみえの家の建設現場では携帯の出会い系サイトで知り合った女性を待つという大介とそれが理解できない五郎が言い合いになっていた。
激高した中畑は大介を殴り飛ばし、携帯電話を川に投げ込んでしまう。五郎が声をかけると中畑はみずえのガンが再発し、余命が長くなく、急いですみえの家を建ててほしいと涙ながらに頼むのだった。
10月蛍の夜勤の日、救急車でみずえが運ばれてくる。主治医はがんが再発して深刻であることを蛍に告げる。新吉から遺言状を書くことを勧められた五郎は中学校の元校長である山下先生に入門する。
謝礼を免除する代わりに自分を廃棄物の家作りの仲間に入れてほしいと山下は頼む。
麓郷の人たちは1日でも早くすみえの家を完成させるべく協力してくれる。
ある日、現場に高村が現れるが、中畑の知り合いだと勘違いした五郎は作業を手伝わせてしまう。
夕方になり、高村が観光客だと知ると五郎は恐縮して詫びるが、高村は五郎を凄い人だと賞賛する。
五郎は高村を石の家に泊め、酒を酌み交わしながら、純の不運を嘆く。
羅臼に戻った高村は純に五郎を呼んで流氷を見せてやれと命令する。
羅臼の港が流氷に覆われる頃、結の夫・弘が番屋に現れ、不良仲間と共に純を袋叩きにする。
駆け付けた高村は弘を殴り飛ばし、純には他人の嫁を奪いたければ少しは戦えとはっぱをかける。
番屋に駆け付けた結に純はもう逃げ回ってばかりの自分を終わりにするため弘に会いに行くと言い、結は猟銃を手に付いていく。
不良仲間の家で結が銃口を向ける中、純は土下座して結と結婚させてくれと弘に頼み込む。
数日後、五郎が羅臼にやってきた。五郎は三沢の爺さんが寝たきりになったことを知らせる。
純はこれまで借金の返済をさぼっていたことを恥じ、これからは逃げずにやっていくことを誓う。
そして結と結婚したいと話すが、結が人妻だと聞いて五郎は態度をかたくなにする。
翌朝、結が番屋に駆け込んでくる。高村がトドを狩りに行ったまま戻らないという。
高村の遭難はテレビでも報じられ、港では迎え火の焚火が夜通し焚かれる。
駆け付けた涼子先生は五郎に結は離婚しているのと同じだと説明する。
純と弘は2人で夜通し迎え火の番をしながら語り合い、結を純に譲ると言う。
翌朝純と弘は港を埋め尽くした流氷の上を歩く高村の姿を見つける。
歓喜して迎える港の人々を押し分けて高村は五郎に歩み寄り、よく参られたと歓迎する。
高村の無事を祝う宴会に純と五郎も呼ばれるが、その最中富良野からみずえの訃報を伝える電話がかかる。
純は2年ぶりに富良野に戻る。
純は五郎が廃棄物で作った雪子の家に感嘆する。
中畑は隣に完成したすみえの家で一人泣いていた。
死の直前中畑は病院からみずえを連れ出し家を見に来たことを話し、五郎に感謝する。
蛍の家に泊まった純は富良野に戻って借金のことをきちんとすること、結とのことを話す。
仕事もないのに結婚すると言う純に蛍は呆れるが、五郎流にやって行けば生きていけると言う。
翌日純は三沢の爺さんを訪ねて土下座するが、爺さんはよく帰ってきたと喜ぶ。
純は爺さんの下の世話をし、その後も時々三沢家を訪れて爺さんの世話をすることにする。
純は市内を歩く結を見かける。結は富良野の生活環境を確認していた。
神社で再会した2人は身を寄せ合って五郎の家に向かう。
蛍の所に正吉からの手紙が届く。
手紙には住所が書かれていた。
五郎の家に駆け付けた蛍は純と結と共に賑やかに夜を過ごす。
皆が寝静まった真夜中、蛍は五郎に正吉の所に行くことを告げる。
五郎は理解しながらも快との別れを悲しみ、遺言状の下書きを涙で濡らしてしまう。
3月下旬、蛍は富良野駅から列車に乗り込んだ。
扉が閉まると五郎は快の名前を呼びながら列車を追いかけて走り出す。
駅員の静止を振り切って線路沿いを走る五郎はいつしか蛍の名を呼んでいた。
五郎は遺言状を書きあげる。「遺せるものは何もない。自然から頂戴しろ」
]]>
北の国からスペシャル・第1位「87初恋」
http://saitoru.exblog.jp/32929864/
2023-01-23T14:04:00+09:00
2023-01-23T14:55:26+09:00
2023-01-23T14:13:34+09:00
saitoru1960
物語
ある日、純は朽ちた風力発電機の前を通りかかり、そこで出会った大里れいに一目惚れする。
その頃、草太は純の友人である広介の姉・アイコに会っていた。
つららが結婚し、幸せに暮らしていることを聞き、安堵する草太。
翌日、純は風力発電のことで電気屋・シンジュクを訪ねていた。
その帰り、純とれいは偶然再会するが急な雨に降られ、平原に立つ大里家の納屋へ逃げ込む。
濡れた服を脱ぎ、乾かしながられいと交わした会話の中で、純は東京の定時制高校進学という選択肢を知る。
やがて大里家に出入りするようになった純は、れいの父・政吉の計らいで、風力発電機の修理に取り組み始め……。
そんなある日、大雨で純の友人・チンタの家の畑が大きな被害を受ける。
政吉は「化学肥料に頼ったからだ」と冷たく突き放し、純も同調する。
そんな純に対し、五郎はつい、れいとの関係を咎めるような物言いをするのだった。
純は、父に黙って少しずつ巣立ちの意志を固めていく。
ところが五郎は純と東京の雪子の間で交わされた手紙を見つけ、純の気持ちを知ってしまう。
そして五郎の誕生日、純はついに完成させた風力発電を披露する。
草太やアイコたちも駆けつけている中、しかし五郎は自分に何の相談もしなかった純に「俺はそんなに頼りにならないか」と激しい感情をぶつける。
思わず家を飛び出す純。
追ってきた草太は「男は見栄で生きてるもんだ」と諭し、純も父に詫びるのだった。
その夜、麓郷に霜が降りる。対策に追われる大里一家だが、政吉は誤って妻をコンテナの下敷きにしてしまい……。これが、秋の出来事だった。
冬。久々に再会した純とれいは「クリスマス、24日の晩、あの納屋で会おう」と約束する。
さらに「卒業式が終わったら、札幌で見つけた天窓のある喫茶店に行こう」と。
ところがその日、大里家は人知れず、町を去っていた。
思い出の納屋へ向かった純が見つけたのは、一通の手紙と、カセットプレイヤーだった。
再生ボタンを押すと、二人の思い出の曲、尾崎豊の「I LOVE YOU」が流れる。
帰ろうとする純は、足跡に気付いた。愛おしそうに納屋を一度振り返った、れいの足跡。
立ち尽くす純は東京へ行く意義を見失いかけていた。
そんな純を一喝したのは迎えにきた螢だった。
しかし螢はその後、優しく純の頭の雪を払う。
家で待っていた五郎も不器用ながら、巣立とうとする純を応援するのだった。
いよいよ出発の日。
頼んでいた東京への長距離トラックがやって来る。父は息子の手をしっかりと握る。
妹は兄の手を優しく握った。トラックの助手席に乗り込んだ純は、ヘッドホンで音楽を聞き始める。
れいのことばかりが思い出されていた。と、不意にその回想が妨げられる。
運転手の男が顎で差した先に、封筒があった。
「しまっとけ」と男は言う。
「 ピン札に泥がついてる。オマエの親父の手に付いていた泥だろう。おら受け取れん。お前の宝にしろ」。
一万円札の泥に蘇る開拓の記憶。幼い日の思い出。
純の目から大粒の涙がこぼれ落ちる。トラックは、雪残る北海道を、東京へとひた走る――。
]]>
吉岡秀隆が語る、倉本聰の素顔
http://saitoru.exblog.jp/32744708/
2022-07-27T11:10:00+09:00
2022-07-27T11:10:07+09:00
2022-07-27T11:10:07+09:00
saitoru1960
物語
弱く、強く、繊細で優しい。私を育ててくれました
先生との出会いは40年以上前で、私は小学4年生。先生も40代と今の私より若く、いつも何かに怒っているような雰囲気を醸しだしていました。『北の国から』の富良野ロケでは先生が現場に来るとピリピリと空気が変わっていました。幼い純君が父である五郎さんに「北海道は自分には合わない」と打ち明けるシーンでは、お芝居が終わり表に出ると先生が走り寄ってきて私を抱きしめてくれました。「よかったよ」と。頭と背中を撫でてくれた感触と、先生のカーキ色のジャンパーのタバコの匂いをよく覚えています。
去年(2021年)、敬愛する田中邦衛さんが亡くなりお手紙をいただきました。いつも力強い先生の文字が力無く震えているように見えました。たまらない気持ちになり富良野に飛びました。「先生、書いてください」「そう言ってくれるのは貴一とヒデだけだ、ありがとうございます」。86歳の作家が50の役者にありがとうございますと言うことにショックを受けました。そういう人なんだと思います。弱く、強く、繊細で優しい。その晩はタルタルステーキをふたりで食べ、よく飲みました。
この頃、改めて五郎さんの生き方に力をもらっています。何かを作り出そうとする時、時間や金がないなら、それをどう工夫するのか考えることだって俺たちの仕事だと去年仰っていました。そのとおりだと大きく頷けるように私を育ててくれたのは先生です。先生の生き方、作品、役と時間を通して教えていただいたことが役者としての私の財産です。
]]>
五郎さんのモニュメント
http://saitoru.exblog.jp/32717753/
2022-06-23T19:23:00+09:00
2022-06-23T22:59:21+09:00
2022-06-23T19:23:08+09:00
saitoru1960
物語
2022年6月23日 13時01分 (共同通信)
テレビドラマ「北の国から」のロケ地、北海道富良野市に完成した黒板五郎さんの記念碑=23日午前
テレビドラマ「北の国から」のロケ地、北海道富良野市で23日、主人公黒板五郎さんの記念碑の完成式が開かれた。今年3月、演じた俳優田中邦衛さんの一周忌に合わせた式典で、脚本家の倉本聰さんが「けじめをつけるため」と構想を明らかにし、地元有志らが建立した。
作中、五郎さんは畑から出てきた自然石を自力で積み上げて家を造り、ドラマ放送後もロケ施設は「五郎の石の家」として公開されている。記念碑は五郎さんの墓という位置付けで、その敷地内に建立。家と同様、地元の石を積み上げたもので、かつて石の家の建築に携わったスタッフのほか、ボランティアら約40人が制作に関わった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
富良野観光協会より
本日、五郎の石の家にて「五郎のモニュメント」の完成除幕式が行われました。
除幕式では倉本聰さんや富良野市長、市内各関係者、報道各社、そしてこの度の製作にご協力いただいたボランティアの方々にもお越しいただきました。
5月下旬から製作に取り掛かり先週はボランティアの方にもお手伝い頂き、除幕式後には倉本聰さんから直接、本日いらっしゃったボランティアの方々に直筆の色紙を贈呈されました。
ご参加いただいた方々にはこの場をお借りして御礼申し上げます。
このモニュメントは倉本聰さんの発案で「一度ケジメを付けたい」との意向もあり作成されました。しかし、倉本さんの中では「五郎さんは僕の中ではまだ生きていますから僕が生きている以上分身として五郎がやりたかった事を僕がやるだろうし今現にやってますけどね」と今日のインタビューの中でおっしゃっていましたのであえてお墓ではなく「モニュメント」とさせていただいています。
明日からもずっと五郎の石の家の敷地内に設置されていますので是非お越しください。
]]>
優しい時間
http://saitoru.exblog.jp/32648745/
2022-04-17T15:07:00+09:00
2022-04-17T15:07:17+09:00
2022-04-17T15:07:17+09:00
saitoru1960
物語
昨年12月「駅STATION」以来の開催となった今回のテーマは、「優しい時間」(2005年)。先生、70歳位の時に書いた作品。
トークは、いつものようにこの作品を書いたきっかけから始まりました。
当初の構想では、「塾生が一向に売れてくれないから(笑)救済事業として、またOBライターと一緒に作り方を特訓して、深夜枠で低予算で作れないかと考えた」といいます。
フジTVに企画を持ち込んだところ「もったいないからゴールデンでやろう」とあれよあれよと話が大きくなっていった。最初は二宮和也さんも長澤まさみさんも頭になかったし、若い役者を知らなかった。喫茶店のマスターとそこに出入りする客のエピソードで連ねる構想だった。
確かに、舞台となる喫茶店「森の時計」のスタッフ2人、常連客の5人、時々訪ねて来る地元客は富良野塾OBさんたちで、脚本にも吉田紀子さん、田子明弘さん、小林彰夫さんの名があり、画面がとても新鮮に映りました。
ドラマを書くヒントとして、喫茶店に出入りする人々の人間模様を描いた「君が青春のとき」という海外の舞台作品、ジェームス・ディーンが出演した映画「エデンの東」の息子と父の関係、母との関係が頭にあったそう。
1.000本を超す作品を書かれたという先生はよくご自身の作品のディテールを覚えてないと言われ、今回の作品もそうだったようですが、一度ご覧になられた後は当時の記憶が蘇られるようで、その博識ぶりにはいつも驚かされてしまいます。
「優しい時間」というタイトル、「森の時計」の店名について
「優しさ」ということが安っぽく使われている。本当の優しさは厳しさに裏打ちされているものだと思う。「厳しくなければ男じゃない、だけど優しくないと人間じゃない」というのはハードボイルドの定義のようなものだけど、それが本当の優しさだと思う。
涌井勇吉が息子に接した態度、借金を申し込む音成への対応など、この辺りから来ていることがうかがい知れます。
第6話「聖夜」
父「森の時計という名前はいいですね」
勇吉「ありがとうございます。---女房の好きな言葉でした」
父「森の時計はゆっくり時を刻む---」
勇吉「----」
父「だが、人の時計はどんどん速くなる。とつづくんでしたな」
勇吉「よくご存知で」 (理論社「優しい時間」より)
この言葉は、富良野塾の舞台作品「ニングル」のセリフでもありました。
森は何十年というタームで時間をかけて成長する。時間と時計は違う。森の時間と人間の時間。
昔は太陽が昇ったら起きて働いた。暗くなったら寝た。今、人間社会はどうだ。太陽に関係なく定時でいいのか。と仰られます。
この作品の放送前、メディアの取材に対して「カチャカチャとした忙しいドラマが多い中で、大人のドラマを創ってみたい。森の木の育ち方に合わせた時間の中で暮らす人たちのドラマを創りたいと考えました」と語られていました。
そして、「今テレビドラマでは感動ということを忘れている。感動という言葉を勘違いしている。若い人がハーゲンダッツのアイスクリームを食べて『おいしい、感動した』と言うけど、それは感動と言わないでくれ、感動とはもっと深いもので、我々はそこを目指さないと」
それから17年後のこの日、この作品は「今のドラマよりスピードがゆっくりしている」とも語られました。
ラストに流れる平原綾香さんの歌う「明日」は、まさにこのドラマを表現しているような曲でした。
閉店後の店内、勇吉とメグの会話
メグの姿はお化けではなく、幻。女房の幻にすがって生きてる。自分の心の投影でもあるから、自分の心の中で交わしてる会話を奥さんとしてる。
「奥さんが死ぬことを考えたことがある?奥さんが先に死んだら、男はすぐに死ぬ。残った方が辛い。看取ってやって、孤独な老後は自分が引き受ける方が相手本意に考えてやること、優しさってことなんじゃないの?」と先生は仰る。
この落ち着いた、何ともシットリした場面にシナリオ本では敢えて注釈が付けられています。
(註・・メグの登場は絶対に照明を変えたりせず、亡霊でなく、現存の人間として描写して欲しい)
「ここでスモークを焚いたり過剰な演出をされることがある。それが邪悪ということ。」
脚本家はここまで絵を描きながら作品を構想するものだということを教えられます。
建物について
オレが建てると言ったら、「それは困る」とプリンスサイドから言われた。「不動産屋だからウチが建てる」と。
設計から装飾まで倉本先生がこだわって作った。壁に飾った鉈割りフレームは、美瑛「ナブの家」の山口さん作。秋の紅葉は色の変化で季節の深まりを表現した。
冬は雪の結晶にしたかったが、TV局が用意したものは写真で、これじゃダメだということで先生が娘さん奥さんで紙を切ってナブさんと作業した。
入口の柵も面白くないので、ツタを使った。脚本だけでなく、建物の設計、入口のツタ、フレームの中までやってしまう脚本家。
秋は紅葉、冬は雪の結晶、春は?と聞かれた先生「新芽」と即答。
そういえば、ドラマの各話のタイトルは、雪虫から始まり、初雪・根雪・吹雪・雪解け、でした。富良野の冬を表現するのに、それだけで何月かを想像できてしまう、見事なタイトルでした。
店の看板は大滝秀治さんの書。強引に頼むと「ナニ、ナニ、何ですか」「ちょっと看板を書いてほしいんだけど」「看板?看板?そんなモン、書いたことない。書かしてくれるの?」「か・か・書かしてあげます」
倉本先生がこういう場面を語られる時は本当におもしろくて、モノマネじゃなく、相手の人格を描写しているようで、ホントにうまい!!感動!!と安易に言ったら叱られます(笑)
大滝さんからは手紙が来て「セリフは覚えなくていいし、役者の仕事が来るよりずっと嬉しい」と(笑)
この建物、2階があるように見せられていて、勇吉が質素な朝食をとっている場面もありましたが、行けないように作られているのだとか。
役者さんについて
キャスティングが決まっても先生はニノも長澤さんも知らなかった。本読みで初めて会い、やたら馴れ馴れしかった。「いきなり『ソーちゃん』だもの」「クリントがね」って言い出して「クリントって誰?」と聞いたら「クリント・イーストウッド」って。
でも、いい芝居してた。ナイーブな芝居ができる。
長澤まさみさんは、当時高校3年生。撮影の合間合間に勉強をしていた。
各話、豪華なゲスト俳優さんが登場されました。
時任三郎さん、手塚理美さん、北島三郎さん、小泉今日子さん、佐々木蔵之介さん、徳重聡さん、田中圭さん・・・、ナント!!星野源さん。
富良野塾生による深夜枠・低予算の構想が、いつの間にかこんなに大きく、心に響く作品になっていたのでした。
第一話のラストシーン。
勇吉がメグとの会話の後、微かに聞こえる歌声に外に出てみると、勇吉の誕生日を祝ってハッピーバースデーを歌う常連客の面々が。
その中に、オニさんが!!
一気に涙が噴き出ました。
お伝えしたい話はもっといろいろあったのですが、長くなりすぎました。
今回は、事前に予習として、ドラマDVDと放送前に北海道ローカルで毎週5分程度放送されていた「エキスタ発 富良野通信」という番組を観ていたせいで、プライベートライブラリーで先生が話された内容とまぜこぜになってしまいました。
森の時計は現在休業中。
このレポートは、来たくても来たくてもどうしても来られなかったファンの皆様に向けて、内容の一端でもお伝えできたらと思って書いています。個人的な感想も含まれていますが、興味を持っていただき、演劇工場で生で聴きたいと思っていただけたら幸いです。
客席のマナーを守り、録画媒体に頼らず記憶を頼りに書いています。そのため、話の流れ、言葉のニュアンス、記憶などに間違いがあるかもしれませんが、ご容赦ください。
また、詳細のレポートをするにあたり、スタッフさんのご意向を確認し、且つご指摘いただいた投稿上のルールを守った上で書いていることを付記します。
次回は、4月23日(土)14:00~ 。
テーマは「白い影」(1973年)と発表されました。
(F)
]]>
優しい時間 「明日」
http://saitoru.exblog.jp/32642814/
2022-04-10T22:57:00+09:00
2022-04-12T23:42:10+09:00
2022-04-10T22:57:33+09:00
saitoru1960
物語
カムカムエブリバディーDVD
http://saitoru.exblog.jp/32605190/
2022-02-26T20:57:00+09:00
2022-02-26T20:57:43+09:00
2022-02-26T20:57:43+09:00
saitoru1960
物語
]]>
「その生き方でいいのか」
http://saitoru.exblog.jp/32563868/
2022-02-01T15:40:00+09:00
2022-02-01T18:51:33+09:00
2022-02-01T15:40:59+09:00
saitoru1960
物語
「北の国から」放送開始40年 問いかける「その生き方でいいのか」 01/31
富良野を舞台にしたテレビドラマ「北の国から」シリーズ。昨年は放送開始40年、今年は最終作から20年と節目が続く。美しい大自然、家族愛といった文脈で語られがちだが、果たしてそれだけか。同作に詳しい作り手と評論家、脚本の倉本聰さんに、今もドラマを古びさせない「苦い本質」を聞いた。
■子どもを故郷に連れ帰った場面が「ドラマの象徴」 評論家・碓井さん
幕開けとなった連続ドラマの放送は1981~82年。バブル景気へと向かう一方、北炭夕張新炭鉱ガス突出事故と閉山など、繁栄する都会と衰退する地方の対比が浮き彫りにもなった。
メディア文化評論家の碓井広義さんが「ドラマの象徴」として挙げるのが、第1話。主人公・五郎(田中邦衛)が子どもたちを故郷に連れ帰った場面だ。廃屋のような家を見て、都会生まれの長男・純(吉岡秀隆)が驚き五郎に訴える。
純「電気がなかったら暮らせませんよッ」
五郎「そんなことないですよ(作業しつつ)」
純「夜になったらどうするの!」
五郎「夜になったら眠るンです」
蛇口をひねれば水が出て、スイッチを押すと明かりが付く。人間が本来やるべきことを、お金を払えば他人や機械がやってくれる時代に「『ちょっと待て、その生き方でいいのか、日本人』という問い掛けをした」と碓井さんは指摘する。
五郎と倉本さんは同じ35年(昭和10年)生まれ。五郎は帰郷、倉本さんは移住という違いはあれど、ともに40代で東京から北海道に移った。五郎一家が遭遇する大自然の猛威と美しさ。都会と地方の意識のずれ。文明と人間。作品で描かれるこうした対比は「倉本先生自身が富良野で経験したこと」と碓井さん。「『北の国から』は『ロビンソン・クルーソー』のように現代社会を合わせ鏡に映す、現代の寓話(ぐうわ)と言える」
脚本家・放送作家の小山薫堂さんはどう見るか。
倉本さんは連続ドラマの放送中、北海道新聞にこんな寄稿をしている。
人類が営々と貯えて来た生きるための知恵、創る能力は知らず知らずに退化している。それが果たして文明なのだろうか。『北の国から』はここから発想した。(82年1月5日付夕刊)
■人間の「どうしようもなさ」を描く 脚本家・小山さん
これを踏まえ、小山さんは「北の国から」について「都会と田舎の対比を通し、人間の生き方の本質を描いている」と表現する。
象徴として挙げるのは「北の国から’95秘密」の一場面。恋人シュウのアダルトビデオ出演という過去にこだわる純に、五郎が告げる。
五郎「ゴミの車に乗るようになってから、お前年じゅう手を洗うようになったな」
純「――」
五郎「お前の汚れは石鹸(せっけん)で落ちる。けど石鹸で落ちない汚れってもンもある」
純「――」
五郎「人間少し長くやってりゃ、そういう汚れはどうしたってついてくる」
純「――」
五郎「お前にだってある」
純「――」
五郎「父さんなンか汚れだらけだ。そういう汚れはどうしたらいいンだ。え?」
純。
間。
五郎「行ってあげなさい。行ってもいちど、全部さらけ出して」
家族や故郷を大切にする五郎も、嫉妬したりメンツにこだわったり、ときに軽薄だったり弱音を吐いたり。純粋に生きる純や妹の螢(ほたる)(中島朋子)も、うそをついたり裏切ったり、不倫をしたり―。小山さんは「他人との対比ではなく、一人の人間の中の『美しさ・強さ』と『醜さ・弱さ』の共存、そのどうしようもなさが描かれる」と分析する。
作品の印象的なせりふを集めた「『北の国から』黒板五郎の言葉」を編んだ碓井さんは言う。「人は白黒付けられるものじゃなく、グレーの部分にこそ人間の真実がある。このドラマは、あるときは暗くて重くてつらい。だからこそ、生きてて良かった、人間ってすてきだと思える。そこに倉本先生の巧みさがある」(せりふは理論社刊のシナリオ集から引用)
■原点から物事見れば考え方広がる 倉本聰さん
「北の国から」について「“苦い薬”を糖衣錠にした」と語る倉本聰さんに、その意味を語ってもらった。
――ドラマの根底にあるものは何でしょう。
「例えば最初の廃屋を修繕する場面。五郎にとって家は雨露をしのげればいい。だけど都会的なものの考え方は違う。別れた妻の令子なら修繕屋にお金を払ってやってもらうだろう。五郎にはそんな考えは全然なく、全部自分でやってしまう。そうした違いがこの話のもとにある」
――自身の体験もある?
「こっちに移ってすぐの頃、道に畳大の岩が出ていて、重機もないし退(ど)かせない。農家の青年に聞いたら、やらねばならないならやるよ、と。どうするのかと思っていたら、スコップで岩の周りを掘って、丸太でテコの原理で少しずつ動かしていく。1日3センチ、10日で1メートル、確かに動いた。脱帽した。都会の感覚では動かないと決めつけてしまう。それができるかできないかという違い、そこが五郎と純の違いでもある」
――現代人が忘れかけている感覚ですね。
「(令子が亡くなり)五郎が上京する場面もそう。試写を見て、ディレクターに怒った。ワイシャツが真新しい。えりにアイロンがかかって、びしっとして。こんなワイシャツを持っているわけがない。しかも、汽車で2日もかけて来たのなら、くしゃくしゃになっているはずなんです。最初の連続ドラマの頃は、スタッフに(そうした感覚が)なかなか伝わらないから、毎日のようにロケ現場に行っていた。でも24回の放送が終わるころにはだんだん分かってくれましたね」
――ラーメン店で純の食べかけの器を早々と片づけようとする店員に、五郎が怒る場面も有名です。
「実はその場面の前で、五郎がしわくちゃの千円札を出しているんです。五郎たちのお金は日銭、時給いくらでもらうお金。ああいう状態のお金を渡されますよ。サラリーマンのようなきれいなものではない」
「つくる側は(五郎の暮らしの実感を)しっかりもっていないと、そういう(文明を問い返すような)作品はつくれないんです」
――現代の“当たり前”を捨ててみる考え方が、今も共感を呼んでいます。
「富士山に例えると、現代人は車で行ける5合目の視点でしか物事を見ていない。だけど、4合目、3合目と下がっていけば裾野は広がり、視野も選択肢も広がっていく。全然別の(登山)ルートも考えられるかもしれない。原点から物事を見れば考え方は広がるのに、それをしなくなったからおかしくなった。人間の暮らしとはどういうものか、海抜ゼロまで下がって考えたのが『北の国から』なんですよ」
]]>
https://www.excite.co.jp/
https://www.exblog.jp/
https://ssl2.excite.co.jp/