<   2004年 06月 ( 1 )   > この月の画像一覧

たまねぎとじゃがいも

周囲5kmのモルディブ・マ―レ島には5万人(‘90当時)もの人々が生活していた。六畳間に4人くらいは平気で寝ている世界的でもトップクラスの濃い人口密度で、子供の一人部屋なんてとんでもない暮らしぶりであった。

その島の中には「よろずや」が結構な数存在していて、人々の生活の基盤となっていた。小さな店の中に、石鹸、鉛筆、ジュースや米、薬などところ狭しと様々なものがあり、この国の人たちの生活を垣間見ることができた。

シンガポールから入ってくるビスケットやチョコレートには文明の香りが漂い、産み落とされてから船便で数日かけて届く卵は割ってみると緑色で腐敗臭が漂うこともままあり、まさにびっくり箱のような店であった。

赤道直下の南の国といえば、バナナやマンゴなどのトロピカルフルーツがいたる所で食べ放題、というイメージがあるが、モルディブはすべての土地がサンゴ礁の隆起から成り立ってできているため土地のやせ方が尋常ではなく、野菜栽培などの指導をおこなう協力隊員も派遣されていた。

自国で取れるものといえばカツオと椰子の実、わずかなバナナくらいしかなく、食品はほとんどが船による輸入である。そのため、日持ちのしない葉っぱものの野菜は店先で見ることはなく、キャベツなどもかなりの贅沢品扱いであった。

モルディブから飛行機で1時間の距離にあるスリランカにも同じように協力隊員が派遣されていた。近いこともあって、隊員同士が行き交うこともあり、いついつスリランカ隊員が遊びに来る、と連絡が入ると、10数名いるモルディブ隊員は自分の知人かどうかは関係なく、それぞれ“よっしゃ!”と小さくガッツポーズを作ったものであった。

新鮮な野菜に飢えているモルディブ隊員へのお土産として、菜っ葉、葉っぱ系の緑色したものを、飛行機に乗せることのできるギリギリの重量までダンボールにつめて持参すること、というのがスリランカ隊員がモルディブに来るときの暗黙の約束事になっているため、ワクワクしながらその採れたての野菜を待っていたのであった。

かのよろずやには、椰子の繊維であんだズタ袋が数個床に置いてあり、それぞれにたまねぎ、じゃがいも、にんにくなどが入っていた。いずれも日本ではまずスーパーに並ぶことがないような小さなくず野菜のような体で、袋の底に残ったくず野菜を集めているのかな、と思ったりもしたが、それはどこの店でも同じでモルディブのノーマルサイズとなっていた。

しかしながら、いくら小さくとも玉ねぎとジャガイモが手に入ることがわかり、これで日本のカレーができるな、と少しだけホッとし、日本人にとって玉ねぎとジャガイモというのは、結構必要不可欠な野菜になっているかもしれないな、と考えたりもした。

日本から届いたハウスジャワカレー6人前サイズのルーで、肉の代わりに缶詰のシーチキンを使い日本のカレーを作ると、直径5cmほどのたまねぎやジャガイモは、裕に10個以上は使わないと必要な量に満たなかった。しかしながら、よろずやで買ったチビたまねぎとチビジャガイモでも、日本を思い出させるには十分おつりのくる味であった。
by saitoru1960 | 2004-06-13 15:59 | モルディブ

心動かされたことを忘れぬように


by saitoru1960
プロフィールを見る