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ベトナムのハノイ外国語大学に、青年海外協力隊員として日本語を教えている栗林さんを訪ねたことがあった。

ベトナムは朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)同様社会主義の国ではあるけれど、ドイモイ(刷新)という国策のもと対外開放化や市場経済の導入などを行い、現在東南アジアで最も活気溢れている国の一つである。

最近でこそ、旅の雑誌などに「東洋のプチパリ」などとちょっとコジャレた書かれ方で南のホーチミンシティーが紹介されたりしているけれど、北の古都ハノイでは旧市街地がラビリンス(迷宮)となり、古き良き時代にタイムスリップすることができる程、新旧が入り交じり実にエネルギッシュな印象を訪れた人に与えている国である。

「サムソンにみんなであそびにいきました。いくときはあさはやかったのでくるまでいき、かえりはふうけいをみたかったのででんしゃでかえりました。かいすいよくをしたり、みんなでしゃしんをとったりしました。」

作文の朗読を聞いていると、日本の大学生とはかなり違ったベトナム学生の休日を窺い知ることができ、少しずつイメージが膨らんでいった。

みなさん、どうぞ学生の隣に座ってあげて下さい、と栗林さんに促されたので、私はある男子学生の隣に座り、おはようございます、と声をかけた。すると、男子学生は、はい、おはようございます、とニコっと笑って返してくれた。授業中なので、私は自分のノートを取り出し、私の名前はさいとうです、と書くと、私の名前はハイです、としっかりした漢字ひらがなカタカナ交じりの文章を書いてくれた。

私はハイさんの授業態度を眺めながら、どんなことをノートに書いているのか、少し斜め目でちょっと盗み見をした。ハイさんはそんな私の態度に気づき、「どこかまちがっているところはないですか?」と小さな声で私に話すと、ノートをずらしてチェックして欲しそうなそぶりを見せた。見てみると、全て日本語で書かれたノートには日本の高校生が書けないような難しい漢字まできちんと正しく書かれてあり、ハイさんの人となりが分かるような実に誠実なノートであった。

むずかしいかんじまでかけるのですね、と私が小さな声で告げると、ハイさんは少しはにかんだような表情を見せ、そんなことないですよ、と謙遜して顔を赤らめた。

日本語の授業が終わり、短い休み時間の間にハイさんと話をしていると、ハイさん達学生の多くは遠く離れた土地からハノイまで出てきて寄宿舎生活を送りながら学んでいるのであった。授業は午前か午後だけしかなく、空いている時間は図書館で勉強したりしている。

寄宿舎の自分のスペースは部屋においてある2段ベッドの自分の寝る場所しかなく、そこにおいてある衣服などを入れたケースの上に教科書やノートを広げ、夜遅くまで勉強しているという話であった。学ぼうとする若者のパワーが満ち溢れているベトナム学生像で、バイトをし、小金を稼いで遊びほうけている日本の大学生とは根本的に何かが違っていた。

何かを自分のものにすることで充実感を得たり利益が生じたりする時、若者は全身全霊をこめてエネルギッシュに燃えることができるものである。幸運なことにベトナムという国には今現在、いくらでも燃えることのできる魅力的なものが山ほどあるのだと思う。

悲しいかな今の日本には、それを身近に探すことができず、若者しか持ちえないエネルギーは、白い煙をくすぶらせて不完全燃焼してしまっている気がしてならない。
by saitoru1960 | 2004-07-08 16:00 | 協力隊

心動かされたことを忘れぬように


by saitoru1960