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マーレ島大運動会

年がら年中30度の気温で四季がなく、かつまた周囲がたった5kmしかない世界では、「いつもと違うこと」はそうたびたび起こることではない。着るものも一年中同じで、ごはんもかつおカレーかかつおの汁かけめしかの繰り返しで毎日毎日ゆっくり過ぎてゆく。

高校生は、朝起きて午前6時から始まる学校に行き、昼前に終わると家に帰って朝昼兼用の軽い食事をとる。学校は学年(グレード・級)によって朝から組か昼から組かに分かれているため、朝から組はそこから自由時間。部活があるわけでもなく、バイトがあるわけでもない。

娯楽といえば、ヒンディー(インド)映画をビデオで観たり、洋楽をラジカセで聞いたりするくらいで、何もない午後のひとときをそんなことで過ごし、ようやく5時から放送開始のテレビを見ながら、かつおのカレーを食べて寝ておしまいの毎日である。

修学旅行や遠足などの学校行事もなく、年に一回学校で進級テストが行われ、緊張した空気が島中に漂う時期だけが、このチビ島で唯一季節が感じられる時になっていた。

国立アミニヤ女子校は小学生から高校生までが通う女子校の名門。周囲5kmの島でなにが名門やねん!、と突っ込んではいけない。驚くなかれ、なんとこのチビ島でありながら人口5万人もが住むマーレには私立の学校が10校近く存在しているのである。

そのアミニヤの先生から、「運動会をしようと考えているのだけれど協力してくれないか」と話がきたのは、4年ぶりに開催したモルディブ陸上競技選手権大会が成功裡に終わった数日後であった。ソウルオリンピック後に開催された陸上選手権はかなりの盛り上がりを見せ、それならば、とアミニヤがこれまた数年ぶりに運動会の開催を決めたのである。

アミニヤは島を4つの地域に分け、それぞれにアミララニ、ダインカンバなどといった名前をつけて、学年を越えた一種の村的な縦の関係をも大切に育てていた。ゆえに、運動会ともなると島中が家族をも巻き込んでの4村対抗大運動会の様相を呈してくる。

母親達は娘のために赤、オレンジ、紫、青と決まっているチームカラーをシャツの袖と襟、そしてキュロットスカートに使った運動会用ユニフォームを丹精込めて縫い上げる。卒業して間もないOG達も仕事の合間に学校に出向いて後輩達の指導にあたり、練習の段階からこちらが予想する以上の盛り上がりを見せていった。

大会は学年別で種目数も多いため4日間開催で、その期間島中が運動会一色となる。校庭には砂場もないので走幅跳のために校外の公園の中に急ごしらえの砂場まで登場し、リレーや走高跳、はては砲丸投といった陸上競技種目が次々と盛りこまれていった。

レクリエーション種目では、スリーレッグレース(2人3脚)、キャタピラーレース(むかで競走)といった日本でもなじみのものから、ズタ袋に両足突っ込んでのピョンピョンレース、はては自転車おそ乗り競走(自転車に乗り、足をつかずにゴールラインに最後についたものが勝ち)といったものまで登場し、それぞれの種目にチャンピオンが生まれ、表彰台の一番高いところで少し恥ずかしげに誇らしそうな表情で金メダルを首にかけてもらっていた。

「ハレ」の日が少ない国だけに、時々やってくる「晴れ舞台」は特別な意味をもっている。

円盤投の表彰台で真ん中に立った少しふとっちょの女の子は、首にかけられたメダルを手にとり、目にうっすら涙をにじませながらはじけるような笑顔を見せていた。
by saitoru1960 | 2004-10-08 16:02 | モルディブ

心動かされたことを忘れぬように


by saitoru1960