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「燃えよドラゴン」と「深夜特急」の旅

香港は中学時代からの憧れの地であった。 映画「燃えよドラゴン」の中で、それまで見たこともないような動きと迫力で戦い続けるブルースリーは、多感な男子中学生にとっての強烈な憧れの人物となった。

映画の冒頭、弟子のラオに稽古をつけるシーンでは、型や、感情をあらわにすることに意味のないことを教えるため、考え込むラオにこう諭す。「Don’t think . Feel !.」(考えるな、感じろ)リーのしゃべるその簡単な英語と哲学的ないいまわしが心にビンビン響き、今もこのフレーズは自分の中でかなりの存在感を示している。

ラオ少年に稽古をつける寺、湾内の船の上で暮らす水上生活者たちの合間をぬいながら漂い進むリーの乗るサンパンと呼ばれる小船、オープニングのサウンドトラックが流れている間バックに映る香港の街並。映画の中で初めて見た香港は、近くて遠い異国であった。

それから15年後。異国の地での生活を決心した頃、「深夜特急」(沢木耕太郎著)という1冊の本に出会った。

旅に憧れる若者たちのバイブルとまでいわれている著作で、デリーからロンドンまで乗り合いバスで行けるかどうか、という旅の展開に、ある時は自分自身を投影させながらのめりこむようにして先へ先へと読み進んでいった。

その「深夜特急」では出発地点インドのニューデリーに行き着く前に、香港へ渡るところから旅がスタートする。ここで15年の時間を経過して自分の中で2つの香港がつながり、再び憧憬の念が強まったのであった。

この2月。初めてその香港をおとずれた。

水上生活者の暮らしていた香港仔(アバディーン)には、数は減ったとはいえ今も幾隻もの船が日常の生活を乗せて浮かび、沢木耕太郎が泊まったと同じような雑居ビルには今尚インド人たちが逞しく商売をし、胡散臭さは十分漂っていた。

ネパール人が路上でみやげ物屋を出し、重慶マンションではアフリカの人たちの密度も高かった。公園ではインドネシア語のテープにあわせて体操をするチャイニーズのおばさんたちがいたりするし、パキスタンレストラン、インドレストラン、もちろん日本語で書かれた店の看板も多数目にすることができた。

古ぼけて煤けた建物の隣に近代的なビルが建ち、廟街と呼ばれるナイトマーケットのざわついた雑踏もどこか懐かしいものであった。

わたしは香港に何を求めていたのだろうと考えていた。

かれこれ30年も前に憧れた国。憧れの人から刺激された街。

自分の中で作り上げてきた香港像が現実と重なったのか、全くのミスマッチだったのか。正確に重なり合ったわけでもなく、全くのミスマッチでもなかった、というのが正直なところであった。30年前の、そして15年前の香港がそこに存在しない以上、きちんと重なり合うわけはなく、重なったある部分だけに少し安堵しながら、今の香港を楽しもうと街を歩き回った。
by saitoru1960 | 2005-02-21 16:07 | アジア

心動かされたことを忘れぬように


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