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ラスト1km。すでにこの1kmのラップは5分20秒まで落ちていた。
途中からみぞれになった雨は体中の熱を奪い、太ももの前面とふくらはぎは、不自然な動きに対してすぐにけいれんを引き起こしそうな気配だった。
「とおるさーん!」
どこからか聞き覚えのある声が聞こえてくる。
道路の左側を見ると、清水が黄色いウエアを着て大きく手を振っている。
「おおう。清水、ありがとう!」
と、ことばを返し、小さく左手を上げると、
「ラスト、ラスト!。頑張らな!。そんなことじゃ、あかんやろ。もっとスピードあげて!!」
とこっちに罵声を浴びせ、歩道を一緒に走ってくれている。
月島に入ってからこわばり続けていた顔の筋肉が緩み、思わず笑顔に変わってしまった。
清水がどんな言葉をかけてくれたのかきちんと覚えてはいない。
でも、自分にとって、それは単なる「頑張れ」や「あと少し」といったありきたりの言葉ではなく、残されたエネルギーをもう一度燃やすために必要な、尻を叩く「むち」に値する言葉だった。
ニコニコしながら、「清水、ありがとう」、と心の中でつぶやいていた。
「ラスト、ラスト!」、「最後の直線」、「飛ばして、飛ばして!」、「がんばらなあ!」。
清水は言葉を投げかけ続け、「あそこで待ってますよ」と、一緒に走れるギリギリのところで伴走して、背中を押してくれた。
この日、涙腺が緩んだ2度目の瞬間だった。
ラップは5分04秒に跳ね上がっていた。

腰から、腰から、とずっと言い続けていた。

レース1週間前に入り、正月の頃のようにせきが出始めていた。
しばらくぎっくり腰も出ていないので、1年に1回は起こるそれを心配して、出るのなら早めに出てくれ、と思っていた時期もあったけれど、それもなく、順調にここまで来ていた。
それが出発当日、朝ごはんのときのたった一つの咳で、引き起こされるとは夢にも思わなかった。
瞬間、腰に短いけれど大きな電気が走り、信じたくないのを確認するため、腰を意識してまっすぐにしようとし、両手をテーブルにつき、腰を椅子からゆっくり浮かした。
その窮屈さはぎっくり腰であることを確認せざるを得なかった。
あとは程度の問題だった。
前回のぎっくり腰では、マンションを出てすぐのトンネルに入る前で電気が走り、脚を動かすことができなかったので、そのレベルだったら赤信号が点滅してしまう。
キネシオテープを腰から背中にかけて左右1本ずつ貼り、160段をゆっくり上がって行った。
ゆっくりゆっくり脚を動かし、いつものコースへ走り出る。
腰に張りはあるものの走ることはできる。
法務局、西落合中学、ユニバ、と進みながら、痛みが少しずつ軽減してきて、腰椎の位置が正しいポジションに戻ってくるような感触が出てきた。
距離が進むにつれましになってくる感じは、正直気分が少し晴れ、ほっとさせられた。
椅子に緊張感なくしばらく座っていると、立ち上がったときに腰椎がずれているように腰が曲がってしまい、元の位置に戻るまで時間がかかる。
空港で、そして機内で座っている時間が長かったため、羽田に着くとやはり腰椎の位置は微妙にずれていた。
入浴後、ベッドに横になっていると腰が沈み、小さな痛みが生じてくる。
寝ている時間ずっと腰が落ちていることを考え、翌朝貼るつもりだったキネシオを縦に2本、斜めに3本ずつ貼って、部屋の電気を消した。
夜中に寝返りを打つ時も小さな痛みは消えなかった。

何時ころからか、部屋に雨音が聞こえてきた。
予報通り、雨が少し強く降り始めてきていた。
前夜のテレビでは、冷たい雨がスタートからゴールまでずっと降り続けているという予報だった。
5時過ぎに起きて外の雨具合を確認したあと、迷った挙句、いつも通勤ランのとき着ているウインドブレーカーにもゼッケンをつけ、長袖の上にかぶり、長タイツで走ることにした。
夢だったランパン&Tシャツの天候にはなってくれなかった。
都庁に着き着替えた後、ペースだとかコースだとか去年考えていたようなことを全く考えることなく、不安材料が少しでも軽減するようなことばかりを考え、腰を伸ばし、ジョグをしながら感触ばかり気にしていた。

腰から、腰から、とやっと手に入れたと思っているイメージを自分に言い聞かせていた。
腰を高く、腰をドライブさせて、ストライドを大きくゆったり。
キロ4分45秒をキープできても、いつどこでこの低い気温のため腰に電気が走るかもしれないと覚悟しながら、前へ前へと進んでいくと、
「とおるさ~ん。がんばって~~」
と、声が聞こえてきた。
25km目前の水天宮付近。近藤だった。
ニコニコ顔で大きな声を出し、背伸びをして手を振ってくれている。
「おおう!こんどう、ありがとう!」と大きく手を振り返し、短い再会を喜んだ。
笑顔がこっちにも伝染し、はたから見たら一人でニヤニヤして変な奴だと思われるかもしれなかったけれど、身体の芯にエネルギーが補填され、それがしばらくして涙腺に伝播してきた。
不思議な心の震えだった。年をとった証拠なのかもしれないな、と今までにない感情をかみしめながら雷門を目指した。

ゴールはいつも必ずやってくる。
タイムが良くても悪くても必ず。
ゴールしたとき、「終わった」ということしか心に湧きあがってこなかった。
やり遂げた充足感も、爆発するような達成感も、湧きあがってくることはなかった。
8分近く去年より早く走ることができたのは事実。
でもその嬉しさは、今までの練習で走った20kmや30kmで、走りながら去年より○○分早く走れている時の嬉しさと似ていて、1年の積み重ねの結果ではあるけれど、ただ早く走れてよかった、という単純な喜びではない。
とりあえず、準備を重ねてきた自分の中の「その日(ゴール)」が終わった。

一つのことが終わった。
1年かけて準備してきたことにピリオドを打ち、時間はまた前へと進んでいく。

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ゴール後、冷え切った体を拭き、着替えて、清水の待つ場所へと向かう途中、明るく暖かい2月の陽の光がビッグサイトの窓から差し込んできていた。
この写真のように、暖かな光の中でゴールできたら、きっともっと気持ちいいだろうな、と素直に思った。
by saitoru1960 | 2010-02-28 23:47 | ランニング

設定と実際

km  目標通過タイム(実際 タイム差+-)
1km 4.50(5.28 +38) 2km 9.40(10.15+35) 3km 14.30(15.00+30) 4km 19.20(19.48+28)
5km 24.10(24.32+22) 6km 29.00(29.13+13) 7km 33.50(33.58+8) 8km 38.40(38.44+4)
9km 43.30(43.27-3) 10km 48.20(48.11-9) 11km 53.10(52.55-15) 12km 58.00(57.39-21)
13km 1.02.50(1.02.18-32) 14km 1.07.40(1.07.03-37) 15km 1.12.30(1.11.48-42) 
16km 1.17.20(1.16.32-48) 17km 1.22.10(1.21.22-48) 18km 1.27.00(1.26.08-52)  
19km 1.31.50(1.30.52-58) 20km 1.36.40(1.35.39-1.01) 21km 1.41.30(1.40.28-1.02)
22km 1.46.20(1.45.11-1.09) 23km 1.51.10(1.49.54-1.16) 24km 1.56.00(1.54.38-1.22)
25km 2.00.50(1.59.20-1.30) 26km 2.05.40(2.04.08-1.32) 27km 2.10.30(2.08.55-1.35)
28km 2.15.20(2.13.44-1.36) 29km 2.20.10(2.18.30-1.40) 30km 2.25.00(2.23.15-1.45)
31km 2.29.50(2.28.03-1.47) 32km 2.34.40(2.32.52-1.48) 33km 2.39.30(2.37.45-1.45)
34km 2.44.20(2.42.38-1.42) 35km 2.49.10(2.47.33--1.37) 36km 2.54.00(2.52.38-1.32)
37km 2.58.50(2.57.40-1.10) 38km 3.03.40(3.02.42-58) 39km 3.08.30(3.07.44-46)
40km 3.13.20(3.13.02-18) 41km 3.18.10(3.18.23+13) 42km 3.23.00(3.23.27+27)

goal 3.28.58(3.24.21+23)
by saitoru1960 | 2010-02-28 23:32 | ランニング

2010東京ラップ

km (/1km)
1km(5.28) 11km(4.44) 21km(4.49) 31km(4.47)
2km(4.46) 12km(4.43) 22km(4.42) 32km(4.49)
3km(4.45) 13km(4.39) 23km(4.43) 33km(4.52)
4km(4.47) 14km(4.44) 24km(4.43) 34km(4.53)
5km(4.43) 15km(4.44) 25km(4.42) 35km(4.54)
6km(4.41) 16km(4.44) 26km(4.48) 36km(5.05)
7km(4.45) 17km(4.50) 27km(4.46) 37km(5.01)
8km(4.45) 18km(4.45) 28km(4.49) 38km(5.01)
9km(4.43) 19km(4.44) 29km(4.45) 39km(5.02)
10km(4.44) 20km(4.47) 30km(4.44) 40km(5.17) 41km(5.21) 42km(5.04) goal<3.24.21>
ave/km(4.50)

ゴールシーンの動画配信
ナンバー「12203」を入れ、左側ゲートを「PLAY」。3時間25分21秒、左はじに白いウインドブレーカーでくたばった顔をして現れます。
by saitoru1960 | 2010-02-28 23:30 | ランニング

駅伝を走る

今年は長距離のメンバー、特に上山と瀧川の駅伝で走れなかった二人のためにと、ラブランにエントリーしたため、いつものテント周辺はかなり賑わっていた。
コースが一部伸び、単純に比較はできないけれど、距離が延びても自分のタイムは去年より30秒早くなっていた。

どんなかっこで走るか迷ったが、結局、東京以来のランパンと長袖にした。
ランパン姿で知っている人の前に出ることはここ何十年なかったこと。
49歳の身体は年齢相応のもので、昔よりも脚の筋肉はかなり落ちている。でも、今なら見られても恥ずかしくない身体になっているかな、と、練習で身体に変化が生じていることを肯定的にとらえられる自分がいて、あまり躊躇することなくランパン姿になることができた

また、遅いスピードが恥ずかしいとかいう、「早い、遅い」も、あくまでも主観的なことでしかなく、周りで見ている人にとってはわからないことなので、まさに、自分の心が何を欲しているのかということが、行動のスタートにあるのだとあらためて感じた。

久田からタスキをもらって走り始めると、「あ、軽いな、いい感じ」と思えたことも気持ち良かったこと。
走り続けて息がきつくなるのは当たり前のことなのだけれど、もう少し暖かければTシャツで走り、また違った感情が得られたかもしれなかった。

チーム1区(5.25km) 2区(6.07km) 3区(6.07km) 4区(6.07km)
伊川谷A
上山:平丸:山本:寺地
中継タイム:25.35(3):54.28(3):1.20.08(2):1.43.45(2)
区間タイム:25.35(3):28.53(4):25.39(3):23.36(1)
1km平均:4.52:4.45:4.13:3.53

伊川谷B
瀧川:中垣:保田:伊藤
中継タイム:26.16(4):54.55(4):1.20.24(3):1.45.01(3)
区間タイム:26.16(4):28.39(3):25.29(2):24.36(2)
1km平均:5.00:4.43:4.11:4.03

4半世紀を超えて
久田:斎藤:根津:大西
中継タイム:20.17(2):47.06(2):1.12.14(1):1.40.06(1)
区間タイム:20.17(2):26.49(1):25.06(1):27.51(3)
1km平均:3.50:4.25:4.08:4.35

26年目に突入
名間:布袋:宮崎:瀧本
中継タイム:19.08(1):47.03(1):1.20.27(4):1.48.31(4)
区間タイム:19.08(1):27.55(2):33.24(4):28.04(4)
1km平均:3.38:4.35:5.30:4.37
by saitoru1960 | 2010-02-14 22:38 | ランニング

とりあえず準備終了

最後の21km走を終えた。
午後から「インビクタス」を見に行き、時間がまだ4時過ぎだったので、明日の午後にしようと考えていたのを前倒しにして、家を走り出た。
日曜日がラブランのため、本当は昨日の午後にでもやりたかったのだけれど、雨で光と中央図書館に行く約束をしたため、ラブラン直前でも仕方がないと割り切っていた。
映画を見て外に出ると、朝とは違って陽の光が温かくさしていたので、今から行こうと決心したのだった。

2009と2010の比較

21km
11月      10月
1.51.35  1.44.45
12月      11月
1.48.37  1.43.32
1月       1月
1.46.12  1.42.39(@4.53)
3月       2月
1.44.09  1.40.17(@4.46)
(妙法寺ゴール)

30km
12月      11月
2.46.51  2.34.58(@5.04)
1月       12月
2.40.45  2.33.06(@5.01)
2月       1月
2.34.21  2.27.24(@4.50)

去年の最後の30km(30.5km)がキロ5.03で走って、当日キロ5.00というところなので、まあ4分50を切るくらいのところで考えて、あまり欲張らずにいこうと思う。
昨日の平均も4分46秒。
最後はかなりきつかったので、あれで最後までは無理だと思う。

4分50秒平均で走れて3時間23分40秒。
33歳の頃の記録に並ぶ、過去3番目の記録になる。
by saitoru1960 | 2010-02-12 21:47 | ランニング

生瀬松陰のセリフ

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「龍馬伝」の中で、黒船に乗り込もうとしていた吉田松陰を桂小五郎と龍馬が止めるシーンがあった。

「桂くんなぜとめるんじゃ。失敗するかもしれないからか。捕まるかもしれないからか。アメリカ人に拒まれるかもしれないからか。そんなものはすべて言い訳じゃ」

「ぼくには言い訳などなにもない」

「どんな運命が待っていようと後悔はしない」
「異国というのはどんなところか。この海の向こうはどんなところか。文明の遥かに進んだ国を見たくて仕方がない」
「たとえ失敗してもそれでいい。何もしないでいるより、何千倍も何万倍も意味がある」

瞬間的に鳥肌の立つセリフに出会えると嬉しくてたまらない。
再放送を録画してセリフを何度も確認した。
by saitoru1960 | 2010-02-07 22:52 | ドキリとしたこと

光のバスケット

第24回神戸市少年団スポーツ大会がグリーンアリーナで開催。ソフトボールが1月はないことも手伝い、光はgっこうのミニバスチーム・ワイルドキッズの練習に参加し、この大会までの助っ人メンバーとなった。チームは15人で構成され、5分の3クオーター制。メンバーは総入れ替えというのが原則のため、人数の足りないワイルドキッズから6年生全体に呼びかけがあり、前から興味を持ていた光は、すんなり参加したのだった。
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1回戦は真野バスケブラザーズ。なかなかはなたにも上手で、簡単に突破。
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光は楽しそうにプレーし、動きも初めてにしては上出来だった。
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2回戦のわだイレブンを破り、決勝戦へ
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でも、逆のブロック福池ボーラーズには180cmを超える先生みたいな6年生がいた。
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決勝は出合ターザンズ。なんと180cmの巨人を見事に抑えきっただけあって上手だった。光の出る第2クオーターで点数差がつき、残念ながら敗退。でも、みごと準優勝をゲット。
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表彰式までの待ち時間に小川君はみんなのコールにこたえて、なんどもダンクシュートを披露していた。
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6年生になって何個目のメダルになるのか・・。銀メダルをかけてもらってうれしそうだった。6年生の先生方、校長先生も応援に駆け付けてくれた。
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写真撮影が終わると外で最後のミーティング
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by saitoru1960 | 2010-02-06 20:32 | スポーツ

正志の13回忌

7回忌にいけなかったことがずっと心の隅に引っかかっていた。
最後に正志の家を訪れたのは3回忌の時だとすると、もう10年も線香をあげに行っていなかったことになる。
6時間目から年休をとり、車で琵琶町をめざした。

大石東町に引っ越した正志の家はもともとは琵琶町にあった。
震災の時、連絡が取れなかったので探しにいくと、家の柱は隣の家の鉄筋に寄りかかりながら、ギリギリつぶれることをまぬがれていた。
「隣の家がなかったら、つぶれてたと思う」とめがねをかけた正志は話してくれた。

野球の練習中、硬球が急所にあたり血尿が出た時は鐘紡病院から我が家に来て泊まり、翌日車に乗って一緒に学校へ行った。
2号線の長田あたりにあったラーメン屋で一緒に夜ラーメンを食べた。

働きだし2年経ったころ、なぜか王子陸上競技場で審判をしている自分のところまでやってきて、しゃべりたいだけしゃべって帰っていった。
もうそのとき、正志の心はすでに疲弊しきっていた。

おかあさんももう今年で60歳になる。

「毎年、元くんと降旗くんがきてくれるんですよ」と話してくれた。
あいつたちもいい大人になっているのだろうな。
by saitoru1960 | 2010-02-04 19:32 | ひとりごと

心動かされたことを忘れぬように


by saitoru1960